動物病院でアレルギーのペットを毎日診断・治療して、課題はやはり「慢性炎症のコントロール」と「フリーラジカルの制御」だと考えています。そこで九州動物アレルギーセンターでは、アレルギーで苦しむ動物と何も出来ず彷徨ってる飼い主さんのために犬アトピー性皮膚炎の治療戦略として「プロバイオティクス(有益な生きた細菌)/プレバイオティクス(有益な細菌のエサ)による腸内環境の改善に加え、酸化ストレスの緩和により免疫抑制剤から解放する脱医薬療法を目指しており、出来るだけ薬物に頼らず治療する解決策、治療オプションを提案したいと思います。この治療介入は薬物と違ってリスクは全くないか、あったといても無視できる程度です。
健康なワンちゃんのウンチをアトピー性皮膚炎の犬に飲ませる(便微生物移植:東京農工大学との共同研究)ことによって痒みが止まるという事実を知りました。免疫細胞の70-80%が配備されている腸管は脅威となる病原体との主戦場となりますが、免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みが、腸内環境改善を改善するために有効性が確認された乳酸菌を投与して、腸壁に住む細菌たちアンバランス(dysbiosis)をチューニング(整頓)すると、免疫を抑制しないと制御不能だったはずの痒みがチャラになる動物たちを目の前で見せてもらい、生命体の無限の可能性を教えてもらい、そのキープレイヤーとなるのはやはり菌だと感じています。
口から入り胃を通過して腸管内を移動し、定住せず短期間だけ“宿泊”し、腸管の動きに合わせて移動しながら、その一瞬一瞬で任務を全うして勇敢に戦死するエキサイティングなビフィズス菌や乳酸菌。まだ絶対的正解ありませんが、実際に決定打となり裏打ちする研究結果がはっきりとそれを証明しています。
さらに皮膚で脅威となるブドウ球菌や口腔内の歯周病菌(グラエ菌)に対して力ずつのアプローチとなる抗菌薬による殺菌ではなく糖アルコールを使った静菌制御で膿皮症や歯周病のコントロールを目指します。
このように免疫抑制剤による一時的かつ姑息的な治療ではなく、動物達の「腸管」、「皮膚」、「口腔内」からのマルチモーダルアプローチによって根本的な治療によってアレルギー性皮膚疾患に対して無謀な脱医薬療法に挑戦し続けます。
この想いがアレルギーで痒がる世界中のワンちゃんと猫ちゃんに届きますように…